History 2
② 薄くてつよいたまごの形、Caraシリーズ
佐々木:それぞれのシリーズについて伺います。まず、Caraってどんなシリーズですか?
小野:初めて高橋さんにお会いした時点で、高橋さんはもうKamiグラスをつくっていました。高橋さんに話を聞いてみたら、「小野さんと仕事するなら、北海道の木を使って、木のうつわらしいものをつくりたい。木であることの特徴を活かしたい」とおっしゃってくれました。最初は「木の器らしいうつわ」ってなんだろうと思って、スケッチを描いては破ること何十枚。そこで大治と話をして、高橋さんの技術はなんといっても、木を薄く削れるってことで、それがあってKamiグラスができたわけだから、その技術は絶対に活かしたい。でも木らしい形って何? あっ、卵の殻だね! って。
佐々木:ちょっと飛躍し過ぎていてついていけない……(笑)
小野:えーっと……、たとえば紙コップみたいなまっすぐの形って、ペコペコするというか横からの力に弱いですね。直線的だから。でもその側面が3次元曲面の形状になると、柔らかい素材でも薄くても強くできる。その代表的な形状がたまごの殻。そうか! 卵みたいに薄くて丸い形だったらかわいいかも! って。すぐにスケッチを描いて、その時東京に来ていた旭川市工芸センターの後藤哲憲さんにスケッチを見せたら、「これいいね!、俺、高橋さんにFAXで送ってくるわー」ってコンビニに駆け込んでいきました(笑)
一同:笑
小野:FAXを受け取った高橋さんが「わかった、これならすぐつくる!」って言ってくれたんですよね。
佐々木:いいはなし。
高橋:あと、その他に家族の設定もしたよね最初のうち、夫婦がいて子供がいて、朝どういう器がいい?って
小野:しましたね。私や大治と同世代くらいの生活をイメージして。
高橋:Caraができる前にいっぱい話をして
小野:朝ごはんのためにつくる器っていうのも頭にあったので、「卵」は結びつきやすかったですね。
高橋:「夫婦で子供がいて、例えば朝みんなで食事するならやさしい感じがいいよね。」って言って手でこういう形づくって(両手で抱えるような動作)「なんかこういう感じだよね」っていうイメージまで来てて、それからさっきの卵の形がFAXで送られてきて、素材を探し始めたんです。卵の形状、形に合わせた素材ってなんだろう、やさしい形っていう時に。最初はイタヤカエデのイメージだった。でもイタヤカエデが当時なくて、シナの木だったら手に入るかもしれない、じゃあシナでやろうと。
小野:器に向いてない木だって言ってましたよね、最初。
高橋:器に向いてない、というよりもシナベニヤ、シナランバーのイメージがあまりにも強すぎて、素材として安いイメージがある。
大治:僕たちはあまりその先入観はなかったよね。
小野:うん
高橋:だから周りの人たちに言ったときに「なんでシナの木でつくるの?」って「こんな安い木で」って。安くはないんですよ。ブロックで買えば。でもイメージ的にシナベニヤがあってそんなにいい雰囲気じゃないから、最初周りの工芸家とか家具屋さんにはちょっとバカにされた感じだったんだけども、試作してみたらまさにドンピシャ!自分のイメージとたぶん小野さんのイメージしている、このデザインの形にこの素材は最高だなっと思って、もう周りの意見を無視してやろう!って。(笑)そういう感じかな。とにかく最初に小野さんが卵の発想に着くまでに相当の電話とメールのやり取りをしたのは記憶にある。